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症例紹介

閲覧時の注意
こちらのページには病気の説明のほか、レントゲン写真やエコー画像、手術中の画像や患部の傷の画像なども掲載しております。 そういった画像が苦手な方は、閲覧に十分ご注意ください。
  • 歯石・歯周病

    症例は10歳齢の避妊済みのラブラドール。歯石がかなり付着したため処置を希望され来院しました。一般状態に大きな問題はなかったため、各種検査にて病気がないことを確認し、麻酔下でスケーリング処置を行いました。

    下の画像はスケーリング前と後の比較です。

    ↓ スケーリング前(右側観)      ↓ スケーリング後(右側観)

    ↓ スケーリング前(左側観)      ↓ スケーリング後(左側観)

    スケーリング後は、歯に付着した歯石が取り除かれ、歯が白くきれいになりました。

    症例は歯石から歯肉炎を起こしており、犬歯の歯肉がかなり下がり歯根が見えています。スケーリング後も、歯磨き・口腔内ジェル・サプリメントなどの口腔内ケアがとても重要になります。

  • リウマチ様関節炎

    症例は8歳齢の避妊済みのマルチーズ。前足首が徐々に外側へ曲がってきて、歩かなくなってしまったとのことで来院しました。以下の写真は来院時の前肢の外貌です。

    前肢の手根関節は外反しており、屈伸させるとパキパキとクリック音がしました。そこで、レントゲン検査を行い、骨関節の状態を確認しました。以下の写真はこの症例の手根関節と、比較のための正常な手根関節です。

    症例の手根関節 ↓            正常な手根関節 ↓

    正常な手根関節と比較し、この症例は手根関節を形成する多数の手根骨が溶解し、関節面が崩れていました。そのために手根関節が真直ぐの状態を保つことが出来ず、外反していました。

    手根や足根に多発性・左右対称性に関節炎所見が認められた場合、免疫介在性の関節炎が強く疑われます。そのため、血液検査・尿検査・関節液検査などを追加で行いました。その結果、リウマチ因子陽性、関節液が水様性で多数の有核細胞を確認、また関節液の培養検査が陰性だったことなどにより、リウマチ様関節炎と診断しました。

    リウマチ様関節炎は進行性の関節疾患であり、手術で改善させることはほとんどできません。そのため消炎剤や抗リウマチ薬、レーザー治療、サプリメントで進行をなるべく遅らせたり症状を緩和します。近年では装具などの関節サポーターにより歩様が改善するケースもあります。

    本症例は病態がかなり進んでおり、劇的な歩様の改善は見込めませんでしたが、病気の進行を遅らせる目的でレーザー治療・サプリメントの投与を行い、積極的に起立して歩くようになりました。

  • 骨盤骨折・仙腸関節脱臼

    症例は年齢不明の外飼の日本猫。外から家に帰ってから歩き方がおかしいとのことで来院しました。以下が初診時レントゲン所見です。

    レントゲン検査により、左の仙腸関節脱臼(白矢印部分・背骨と骨盤を繋いでいる関節)と、左の腸骨骨折(黒矢印部分・骨盤を構成する骨の一つ)が確認されました。

    このように、腸骨・坐骨・恥骨といった骨盤を構成する骨の骨折が確認された場合、骨盤周囲に存在する尿道や直腸も損傷を受けている可能性がありますが、本症例は尿道や直腸の損傷は確認されませんでした。

    そのため、歩行の回復と、骨盤狭窄による排便困難の回避を目的として、仙腸関節脱臼の整復を行いました。以下が手術後のレントゲン画像です。

    スクリューとキルシュナーワイヤーにより、仙腸関節の固定を行いました。なお、股関節より後方の腸骨骨折の場合、体重負荷に影響がなく、通常あえてプレート固定などを行う必要はありません。そのため、本症例も黒矢印で示した通り、腸骨骨折はそのまま温存しました。術後、排便困難はなく、歩様も3週間ほどで回復しました。

    仙腸関節脱臼や腸骨骨折などの骨盤骨折を起こすと、歩行の問題だけでなく、骨盤狭窄から重大な排便困難を起こす可能性があるため、受傷後早期に整復手術を行う必要があります。

  • 咬傷による臀部の化膿

    症例は推定10~15歳齢の外飼いの日本猫。外から帰ってきた飼い猫が、おそらく他の動物に咬まれたらしく、右臀部のあたりを怪我をしているとのことでした。

    怪我を発見した当初は、他院にて患部の洗浄・消毒が行われ、抗生剤を処方されていました。しかし、数日の間にみるみる傷は悪化し、一般状態も良くないとのことでセカンドオピニオンを求めて当院へ来院されました。以下が当院初診時の臀部の傷の様子です。

    患部は感染が制御できておらず、広範囲に皮膚が壊死していました。また、壊死した皮膚の下には蛆(ウジ)が湧いており、既に通院での管理は難しい状態でした。そのため、入院治療により徹底した患部の洗浄と点滴治療を行うこととしました。

    入院後、一週間ほどで元気食欲は改善し、患部の皮膚の感染も落ち着いてきました。感染が収まったため、外科的に傷を縫合することも検討しましたが、本症例は高齢のため外科的な処置は行わないことになりました。飼い主様には長期の入院を了承して頂き、洗浄による管理を継続しました。

    上の画像は入院4週目の傷の様子です。感染が収まってからは傷は順調に縮んでいき、無事退院となりました。

    上の写真は退院して1週間目の定期検診時の様子です。傷はほぼ塞がりました。

    動物同士の喧嘩による傷は、治療が遅れると感染がすすんでしまい、最悪死に至る可能性もあります。本症例は、通院での治療反応が悪いと判断した時点で、早期に治療方針を転換できたことで傷を治癒させることができました。

  • モンテジア骨折

    症例は推定12~13歳齢の日本猫。1か月程前にタンスから落下し、左前足を着かなくなり、他院にて骨折の手術を受けたが経過が良くないとの事で来院しました。以下が初診時のレントゲン所見です。

    左前肢は尺骨の骨折と橈骨脱臼が併発した、モンテジア骨折を起こしていました。それをプレートとスクリュー、ワイヤー、そしてギプスにより固定が試みられていましたが、骨癒合はほぼ進んでおらず、肘に近い位置のスクリューは既に抜けかかっていました。

    また、骨折部は不適切に固定されたために掌側面(手のひら)が180度回転した状態で固定がされていました。(下画像の矢印部分)

    そのため手術により、インプラント(体内に埋め込むプレートなどの医療用人工素材)を除去し、解剖学的に正しい位置に整復したうえでプレート・スクリューによる再固定を行いました。

    手術後のレントゲン画像です。一枚のプレートと複数のスクリューにより固定され、外貌も自然な状態になりました。また骨癒合を促すため、骨折部には海綿骨移植を実施しました。

    後日、骨が癒合したのを確認し、インプラントを除去して完治しました。

  • インプラントによる骨粗鬆

    症例は推定15歳齢の日本猫。左臀部を気にして舐めており、ベタベタしているとのことで来院しました。患部を毛刈り・洗浄したところ、左臀部に穴が開いており、感染を起こしていました。

    問診にて、この猫は数年前に左大腿骨骨折の手術を受けているとのことでした。そのため、骨まで感染が波及している可能性があり、レントゲン検査を行いました。

    上の画像はレントゲン検査所見です。過去の骨折の手術で使われたと思われる2枚のプレート、スクリュー、そして多数のワイヤーによる大腿骨の固定が確認されました。骨は多数のインプラント(体内に埋め込まれた人工素材)により、骨皮質が薄くなり、骨粗鬆を起こしていました。

    また臀部の感染は、ゾンデと呼ばれる医療用器具で中を探索した所、インプラントまで達していることが分かりました。

    そのため、骨粗鬆の改善と感染拡大を防ぐため、手術によりインプラントの除去を行いました。

    左の画像は、ワイヤーとプレートが大腿骨に固定されている様子です。右の画像は、全てのインプラントを除去した後の大腿骨の様子です。スクリューが埋め込まれた部分では、骨が溶けて穴が開いていました。

    術中所見では、骨がダメージを受けた領域は広かったものの、強度はある程度維持されていたため、創外固定などの新たなインプラントによる固定は行わず、術部の培養検査と洗浄を行い、手術を終了しました。

    術後のレントゲン写真では、明らかな骨粗鬆が確認されました。その後は絶対安静と長期抗生剤の投与により、骨は徐々に硬化していき、最終的に通常の生活に戻ることができました。

    骨折で使うインプラントは、かなり後になって問題を起こすケースも時々あるため、定期健診により問題が起きていないか確認していくことが重要となります。

  • 異物による消化管通過障害

    症例は1歳齢の小型のミックス犬。ここ2日間、元気・食欲がなく、一回吐いたとのことで来院しました。レントゲン・エコー検査を行ったところ、胃・十二指腸の異常な拡張所見が認められました。

    ↓ 画像の矢印で示した部分が拡張した胃

    そこでバリウム造影検査を実施し、消化管の通過状態を確認しました。

    ↓ バリウムを飲ませた直後       ↓ 1時間後

    ↓ 2時間後               ↓ 4時間後

    バリウム造影検査の結果、胃の明らかな拡張と、十二指腸に異物を疑う陰影を確認しました。また、バリウムは4時間経過しても胃の中に滞留しており、異物の誤食による消化管通過障害が強く疑われました。

    そこで、試験開腹を実施し、開腹下で消化管を始めとした腹腔内臓器の確認を行いました。その結果、胃と十二指腸に異物が確認されました。

    上の画像は胃と腸の異物を触診にて確認したところです。他の諸臓器に異常が無いことを確認し、胃および腸を切開、異物を摘出しました。

    異物は多量の繊維の塊と、輪ゴムでした。このような糸状・ヒモ状の異物は、放置するとピンと張ってしまい腸が切れ、腹膜炎を起こす恐れがあります。そのため、糸状・ヒモ状の異物を疑う場合は、特に迅速な対応が必要となります。

    異物を食べるクセのある動物は、誤食を繰り返すことがあります。飲み込んで詰まらせるような物は、動物の届く範囲には置かないようにすることが重要です。

  • 会陰ヘルニア

    症例は10歳齢の未去勢オスのシーズー。便がなかなか出なくなってしまったとのことで来院しました。直腸検査(肛門から指を入れて中を触診)をしてみると、肛門周囲の筋肉が萎縮し、中で直腸が蛇行しており、会陰ヘルニアと診断しました。

    会陰ヘルニアとは、中高齢の未去勢のオスに発生する疾患で、臀部周囲の筋肉が萎縮することで直腸や膀胱・前立腺、尿道が変位し、排便障害や排尿障害を呈します。

    本症例では、特に右側で筋肉の委縮が激しく、肛門右の皮膚のたるみ、肛門の右方への変位が認められました。そこで、手術により会陰ヘルニアの整復術を行いました。

    上の画像は、肛門の両脇を切開し、医療用メッシュ素材を挿入した様子です。萎縮してしまった筋肉の代わりに、このメッシュを使って直腸の壁を再建します。

    左側のメッシュを周囲の筋肉・結合組織・靭帯などに固定した様子です。右側も同様に固定します。

    肛門右側の術創の縫合後の様子です。左側も同様に縫合します。最後に直腸検査をして、直腸がまっすぐに伸びているのを確認して終了となります。以降、排便はスムーズに行えるようになります。

    会陰ヘルニアには、自己の筋肉や組織を使って整復する方法と、本症例のようにポリプロピレンメッシュなどの医療用人工素材を使って整復する方法があり、症例によって使い分けます。近年では再発が少ないという理由から、メッシュを使った手術法が行われる機会が多くなっています。

  • 骨肉腫

    症例は8歳齢のパピヨン。最近、右後肢が腫れてきて、痛そうにしているとの事で来院されました。以下の画像は、右後肢の様子です。

    触診では、右後肢の脛骨(スネの骨)に疼痛があり、矢印で示した足首にちかい部分がかなり腫脹していました。

    レントゲン検査では、右脛骨の全域に渡って異常な骨破壊像・骨増殖像が認められました。病変は大腿骨や足首の骨にまでは拡大しておらず、脛骨のみに限局していました。そのため、骨の悪性腫瘍である骨肉腫が強く疑われました。

    麻酔下で骨の生検を行い、病理検査を行った結果、骨肉腫と診断されました。

    骨肉腫は悪性度が高く、発見された時には9割が既に転移しているとも言われています。本症例も、残念ながら既に転移している可能性が高いと考えられましたが、QOL(生活の質)の向上のため、断脚術が実施されました。

    断脚後、三本足での生活にはなりますが、犬や猫は三本足でも上手に生活でき、ほとんど不便にはなりません。本症例も、痛い足がなくなったことで明らかに元気になり、食欲も旺盛になりました。

  • 橈尺骨骨折

    症例は11歳齢の長毛腫の猫。会社で飼っていたが、3週間ほど姿を見せなくなり、その後外から帰ってきたら前足を上げていたとのことで来院しました。

    レントゲン検査では、橈骨・尺骨の2本が折れており、そのため手術による整復を行いました。以下が術後のレントゲン写真です。

    尺骨を髄内ピンにて整復し、橈骨をDCPプレートにて固定しました。また橈骨・尺骨は元々血液供給が少ない骨で、折れてしまうと癒合不全を起こしやすいことが知られています。そのため、本症例では癒合不全を防止するため、海綿骨移植を行いました。

    海綿骨移植とは、上腕骨などの太い骨に穴をあけ、そこから骨内部の軟らかい骨(海綿骨)を採取し、骨折部分に埋め込むことで骨癒合を促進させる技術です。

    手術後はやはり安静が重要となります。