外耳道切開
[2015年04月06日]
外耳道切開
症例は10歳齢の柴犬のオス。右耳の外耳炎を慢性的に繰り返しており、耳道洗浄・外用薬・内服薬などの内科治療を実施しました。しかし、症例は既に耳道狭窄を起こしており治療反応が悪く、耳の痒み・痛みが相当なストレスとなっていました。
そこで飼い主様と相談の結果、手術を実施することとしました。犬の耳道は、まず縦穴(垂直耳道)があり、次に横穴(水平耳道)へと繋がり、鼓膜へと続きます。
本症例は、ほとんど塞がってしまった垂直耳道の外側を切り開くことで外耳炎の緩和する、外耳道切開術を行なうこととしました。
上の画像は術前の右耳の外観です。左が毛刈り前、右が毛刈り・消毒を行ない手術の準備が整った後です。慢性外耳炎のため、耳道外側の皮膚が変色しています。
上の画像は皮膚を切開し、垂直耳道が見えてきたところです(矢印部分)。耳道周囲には顔面神経が走っているため、重要な神経を損傷しないよう慎重に垂直耳道を露出させます。
垂直耳道の外壁を切り開き、切開した皮膚に縫い付けたところです。垂直耳道の内壁が露出しています。
術後は毎日生理食塩水で洗浄を行ない、培養検査結果に合わせた抗生剤の投与を行ないます。
術後2週間、抜糸後の耳の様子です。垂直耳道の外壁が無くなり、通気性が良くなっています。耳道洗浄も目視で確認しながらできるようになり、管理が容易になりました。右耳の痒み・痛みは改善し、現在は定期的な耳洗浄を行なっています。
外耳道切開は重要な神経付近を操作します。また、耳道の慢性的な感染から術後に傷が開いてしまうリスクがあります。そのため、手術中の慎重な操作はもちろんのこと、術後管理にも十分気を配る必要があります。