膝蓋骨内方脱臼
[2015年03月20日]
膝蓋骨内方脱臼
症例は3歳齢のメスのパピヨン。床で足を滑らせて以来、右後肢を気にしており間欠的に跛行しているとのことで、かかりつけ医を受診しました。かかりつけ医では右後肢の膝蓋骨脱臼を指摘され、当院へはセカンドオピニオンを求めて来院されました。
当院においても触診にて右膝蓋骨内方脱臼が確認され、X線検査を行いました。
膝関節が内方脱臼しているのが確認できます(白矢印部分)。触診・X線検査にて他の骨関節疾患がないことを確認し、右膝蓋骨内方脱臼による跛行と診断しました。
飼い主様には外科療法・内科療法の利点・欠点をご説明し、相談の結果、手術を行うことになりました。以下は術中所見です。
↓浅い滑車溝・軟骨のびらん ↓滑車溝を深く造溝
左画像は、膝蓋骨(膝のお皿)を内側へ引っ張っていた筋肉(縫工筋前部・内側広筋)を切断し、膝蓋骨が乗る滑車溝を露出させています。溝は浅く、内側の山(白矢印)が膝蓋骨との摩擦でびらんを起こしています。
右画像はサジタルソーと呼ばれる医療用機器を使って溝を深くした後の画像です。
上の画像は、膝蓋骨を滑車溝に乗せ、内側へ曲がってしまっていた脛骨(すねの骨)に切れ込みを入れ外側に矯正し金属で固定(青矢印)、外側の緩んだ関節包を切り取って縫縮した(白矢印)後の画像です。
これらの手技により、膝蓋骨は滑車溝の上だけを滑るようになり、脱臼を防止します。
上の画像は術後のX線検査所見です。白矢印で示したように、膝蓋骨が正常な位置に矯正されています。術後は2〜3ヵ月かけて徐々に運動量を増やして行き、通常の生活に戻ります。
この症例は術後すぐに跛行は消失し、徐々に運動量を増やして2ヶ月後には通常の生活に戻りました。