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症例紹介

閲覧時の注意
こちらのページには病気の説明のほか、レントゲン写真やエコー画像、手術中の画像や患部の傷の画像なども掲載しております。 そういった画像が苦手な方は、閲覧に十分ご注意ください。
  • 上顎の巨細胞性エプリス

    症例は10歳齢のミニチュア・ダックスフント。上顎にしこりができ、他院にて抗生剤を処方されていたが、改善がないとのことで来院されました。

    この腫瘤は右上顎第二~第三切歯周囲に存在しており、病理検査の結果、巨細胞性エプリスと診断されました。巨細胞性エプリスは、ガンや低悪性度の腫瘍と比べ、浸潤性は低いと言われています。しかしこの症例は、右の画像で示したように、硬口蓋(上顎の歯の裏あたり)まで腫瘍が浸潤しており、その後2週間で2倍ほどに腫瘍が増大しました。

    そのため、正常範囲を含めた拡大切除を実施することとし、上顎部分切除術を行いました。

    上の画像は手術後の様子です。左上顎第二切歯から右上顎犬歯前方までの上顎骨を含めた腫瘍を切除し、粘膜と硬口蓋を縫合しました。

    犬の口腔内腫瘍は、現在研究者により腫瘍の分類が再度なされている状態であり、良性と診断されたとしても、腫瘍の増大が早い・腫瘍が破けるなど挙動が悪ければ、悪性と同じ手術対応が必要となる場合があります。

    本症例は、腫瘍が小さい内に、最小限の拡大切除が実施できたことで、手術後も顔の変形はなく、食事も問題なくすることができます。

  • 下顎のエナメル上皮腫

    症例は10歳齢、ミックスの中型犬。下顎にしこりがあるとのことで来院しました。

    腫瘤は右下顎の後臼歯周囲を取り巻くように存在しており、病理検査の結果、エナメル上皮腫と診断されました。エナメル上皮腫は骨や歯肉への浸潤性が強く、取りきるには正常組織を含めた広範囲な切除が必要になります。そのため、下顎部分切除術を実施しました。

    画像は切除後の右下顎の様子です。円で示しているのが、腫瘍を骨ごと切除した部分です。

    ↑ 外側から見た腫瘍           ↑ 上側から見た腫瘍

    腫瘍切除後、下顎骨の断端を丸く削り、切除部分を口唇フラップにより縫合、口角の縫合をして手術が完了しました。

    エナメル上皮腫はいわゆる悪性腫瘍ではなく、転移はしません。しかし組織浸潤性が強く、中途半端に切り取ってしまうと再発するため、悪性腫瘍と同様の手術対応が必要です。

  • 化膿性眼球炎

    症例は10歳齢の日本猫。この一週間ほどで左目がみるみる黒くなってきたとの事で来院されました。以下の画像は初診時の外貌です。

    左眼球は化膿しており、排膿し始めていました。既に視力回復の見込みはなく、QOLの向上と全身状態の悪化を防ぐ目的で、眼球摘出術を実施しました。(QOLとはQuality of Lifeの略で、生活の質という意味です)

    画像は術後の様子です。摘出した眼球は、病理検査によって腫瘍ではなく化膿性病変と確認されました。この後、傷が癒合し被毛が生えそろえば、より自然な外貌となります。

  • 骨盤骨折・脛骨骨折

    症例は推定2か月齢の三毛猫。道路の側溝に落ちていたところを保護したが、歩かないということで来院されました。以下の画像は、初診時のレントゲン所見です。

    右骨盤骨折と、左脛骨骨折が確認されました(矢印部分)。また、各種検査により、尿道や直腸に損傷がないことを確認し、骨折整復手術を行いました。

    左の画像は寛骨臼プレートによって骨盤の骨折部を固定した様子です。右の画像は左脛骨をDCPプレートで固定した様子です。

    左画像の左上の布状のものは医療用ゴムで、坐骨神経を保護しています。坐骨神経は損傷してしまうと、歩行に重大な障害を残す可能性があるため、取り扱いには十分な注意が必要です。

    術後のレントゲン画像です。術後すぐに歩行は回復しましたが、骨が癒合するまでは安静が必要です。骨盤を骨折した場合、歩行の問題だけでなく、骨盤狭窄による排便困難などの問題が後々発生することがあり、注意が必要です。

  • 膀胱・尿道結石

    症例は10歳齢、オスのペキニーズ。尿の出が悪く、血尿も出ているとのことで来院しました。以下の画像は初診時レントゲン写真です。

    レントゲン・エコー検査により膀胱・尿道結石が確認されました。通常、尿道はレントゲン写真には写りません。しかし本症例は、画像の矢印で示したように、尿道に細かい結石がぎっしり詰まってしまったために、尿道があたかも尿路造影されたかのように映ってしまっています。

    そこで、手術により尿道・膀胱結石の摘出を行いました。

    上の画像は摘出した結石です。これ以外にも、砂状の結石は大量に摘出され、尿道・膀胱を良く洗浄し閉腹しました。

    本症例は幸い腎機能に影響はありませんでしたが、これ以上処置が遅れていれば、尿路閉塞による急性腎不全や膀胱破裂、また感染による腎盂腎炎を起こしていた可能性があります。早期発見、早期治療が肝要となります。

  • 脛骨粉砕骨折

    症例は推定10歳齢の猫。家の天井近くの高い場所から落下し、それから右後肢を引きずっているとのことで来院しました。以下は初診時のレントゲン写真です。

    右の脛骨が中心部で粉砕骨折しており、良く見ると膝関節に向かって骨折線が縦に入っており、骨が縦割れを起こしていました。こうなると通常のプレート固定は出来ない可能性があり、難易度は格段に高くなります。

    上の画像は左が骨折部の様子、右がインプラント固定後です。左の画像では矢印で示したように、骨は縦に割れており、一枚でのプレート固定は不可能な状況でした。そのため、ラグスクリューと二枚のカッタブルプレートを組み合わせて固定を行いました。以下が術後レントゲン画像です。

    猫というと、体が柔らかいのでかなりの高さから落っこちても大丈夫だと思われがちですが、猫によっては上手に降りるのが苦手な子もおり、注意が必要です。

  • 胆嚢粘液嚢腫

    症例は8歳齢のミニチュア・ダックスフンド。健康診断にて胆嚢拡張が見つかり、内服にて経過を観察していたが、更に胆嚢拡張が進行したため、手術を行いました。

    画像は拡張した胆嚢の超音波画像です。胆嚢周囲は矢印で示したように、高エコー(白)になっており、胆嚢周囲の炎症が疑われました。

    左の画像は摘出した胆嚢、右の画像はその胆嚢を割ったものです。胆嚢の内容物はゼリー状に固まっており、また胆嚢壁は肥厚し炎症を起こしていました。

    本症例は健康診断にて胆嚢拡張が発見され、慎重な経過観察ののち手術に踏み切りました。放置すれば胆嚢破裂から腹膜炎を起こしていた可能性があります。しかしながら手術自体の難易度は比較的高いため、治療方針は飼い主様とよく話し合い、決定する必要があります。

  • 膝蓋骨内方脱臼

    症例は4歳齢のポメラニアン。よく右後肢を上げ、スキップするような歩行になるとの事で来院しました。しばらくすると正常歩行に戻るが、また少し経つとスキップするとのことでした。

    画像は初診時のレントゲン画像です。矢印で示した膝蓋骨が、左は正常な位置にありますが、右は内方に脱臼しているのがわかります。触診でも右膝蓋骨がゆるく、すぐに内方へ脱臼してしまい、膝関節を屈曲・伸展させると、違和感を感じているような仕草がありました。他の関節には特に違和感はなく、膝蓋骨内方脱臼による跛行と診断し、手術を行いました。

    画像は術後のレントゲン画像です。縫工筋前部・内側広筋のリリース、滑車溝の造溝、脛骨転移、関節包の縫縮を行い、力学的に足がまっすぐ屈伸できるよう矯正しました。画像のインプラント(白く映っているピン)は脛骨に切れ目をいれ、外側へ転移し、それを固定するために打ち込んだキルシュナーワイヤーと呼ばれる金属です。

    膝蓋骨脱臼は長期間放置することで徐々に骨の変形が進み、老齢になってから障害がでることも多い疾患です。明らかに痛みがある場合だけでなく、関節炎や膝周囲の靭帯損傷を最小限に抑えるため、手術が選択されることもあります。

    内科的には、太らせないこと、激しい運動を避けること、床材を滑りにくいもの(マットを敷くなど)にすることなどが重要になります。

  • 腎結石・膀胱結石

    症例は10歳齢のウェルシュ・コーギー。以前から間欠的に血尿が続いていたが、一週間ほど前から徐々に元気・食欲がなくなってきたとのことで来院しました。

    画像は静脈性尿路造影により、腎臓・尿管・膀胱が白く強調されて撮影されています。右腎に小さな結石と、左腎にキノコのような大きな腎結石が確認され、膀胱にも無数の結石が確認されました。また各種検査により、両腎とも機能は維持されていることが確認されました。そこで、手術により左腎の大きな結石と無数にある膀胱結石の摘出を実施しました。

    左の画像が摘出した腎結石で、右が膀胱結石です。本症例は細菌感染により腎盂腎炎を起こしており、術後は静脈点滴や抗生剤投与を行いながら注意深く経過観察する必要がありました。また、結石が出来にくいような食事療法が重要になります。後日、一般状態は改善し退院しました。

  • レッグ・ペルテス

    症例は8か月齢のトイプードル。3か月齢で家に来たが、その時から左後肢を使いたがらずケンケンしているとのことで来院しました。他院にて様子を見ましょうと言われ、そのままにしていたが一向に良くなる気配がないとのことでした。

    左が本症例の初診時レントゲン画像、右は比較のための別の犬のレントゲン画像です。右の画像のに比べ、左の画像では矢印で示した両方の股関節の大腿骨頭の部分が膨化・変形しています。画像や身体検査所見、病歴から、若い小型犬に見られるレッグ・ペルテス(大腿骨頭壊死)と診断し、痛みの症状が強く出ている左側の大腿骨頭切除を行いました。

    左が術後レントゲン画像、右が切除した大腿骨頭です。この疾患は大腿骨頭の虚血により骨の変形を来し、疼痛が生じます。切除した骨頭はかなり脆くなっていました。

    骨頭を切除することで、骨盤側の寛骨臼と大腿骨頭との軋轢がなくなり、痛みがなくなります。骨頭切除した後、股関節の隙間が大きくなることで、足がグラグラになってしまうのではと心配される方が多くいらっしゃいますが、骨頭がなくなってしまってもその隙間には線維性の結合組織が入り込み、大腿骨と骨盤を支えてくれるため、足がグラグラになってしまうことは通常ありません。

    本症例は5か月もの間、左後肢の跛行を続けていましたが、術後三日後には足を着けるようになり、3週間後には正常歩行になりました。