インプラントによる骨粗鬆
[2013年11月16日]
インプラントによる骨粗鬆
症例は推定15歳齢の日本猫。左臀部を気にして舐めており、ベタベタしているとのことで来院しました。患部を毛刈り・洗浄したところ、左臀部に穴が開いており、感染を起こしていました。
問診にて、この猫は数年前に左大腿骨骨折の手術を受けているとのことでした。そのため、骨まで感染が波及している可能性があり、レントゲン検査を行いました。
上の画像はレントゲン検査所見です。過去の骨折の手術で使われたと思われる2枚のプレート、スクリュー、そして多数のワイヤーによる大腿骨の固定が確認されました。骨は多数のインプラント(体内に埋め込まれた人工素材)により、骨皮質が薄くなり、骨粗鬆を起こしていました。
また臀部の感染は、ゾンデと呼ばれる医療用器具で中を探索した所、インプラントまで達していることが分かりました。
そのため、骨粗鬆の改善と感染拡大を防ぐため、手術によりインプラントの除去を行いました。
左の画像は、ワイヤーとプレートが大腿骨に固定されている様子です。右の画像は、全てのインプラントを除去した後の大腿骨の様子です。スクリューが埋め込まれた部分では、骨が溶けて穴が開いていました。
術中所見では、骨がダメージを受けた領域は広かったものの、強度はある程度維持されていたため、創外固定などの新たなインプラントによる固定は行わず、術部の培養検査と洗浄を行い、手術を終了しました。
術後のレントゲン写真では、明らかな骨粗鬆が確認されました。その後は絶対安静と長期抗生剤の投与により、骨は徐々に硬化していき、最終的に通常の生活に戻ることができました。
骨折で使うインプラントは、かなり後になって問題を起こすケースも時々あるため、定期健診により問題が起きていないか確認していくことが重要となります。