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腸腺癌切除・消化管吻合

[2016年06月05日]

腸腺癌・消化管吻合

症例は10歳齢の日本猫、去勢オス。一週間前より元気・食欲が減退して行き、ここ3日間は全く食べず、吐いているとのことで来院しました。

画像診断より、胃と小腸に液体貯留が認められ、更に小腸と思われる領域に腫瘤が認められました。これにより、腫瘤による消化管通過障害が強く疑われたため、麻酔下にて腹部の試験開腹を行ないました。

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上の画像は開腹直後の所見です。開腹してすぐに拡張した小腸が確認できました。さらに腸を精査すると、通過障害の原因となっていた小腸の腫瘤が確認されました。

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上の画像の、指で指し示している箇所が腫瘤です。腫瘤より吻側(口に近い側)は腸管が重度に拡張しています。

そこで、腫瘤を十分な切除マージンをとって切除し、消化管吻合を行ないました。

IMG_3291 のコピー

上の画像は、消化管吻合を行なった後の腸管の様子です。拡張してしまった腸と通常の大きさの腸では、直径が大きく異なり、そのような腸同士を吻合するのは、ある程度の技術が必要となります。消化管吻合後は他の臓器に異常がないことを目視・触診にて確認し、無菌生理食塩水にて腹腔内洗浄を行なった後、常法通り閉腹しました。

腫瘤は病理検査に提出し、後日、腺癌と診断されました。

腸腺癌は術後の死亡率が多いとされる腫瘍で、ある研究では術後の腹膜炎や転移、その他の合併症で50%近くが死亡したと報告されており、注意が必要です。

本症例は病院スタッフと飼い主様の献身的な看護により、嘔吐が止まり元気・食欲も回復しました。一年近くたった現在も元気に生活しています。