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粘膜プルスルー

[2017年07月04日]

粘膜プルスルー

症例は12歳齢のダックス、避妊メス。元気がなく、粘血便が続いているとの主訴で来院しました。まずは一般的な内服・食事療法といった腸炎治療を行いましたが、反応が乏しく、直腸検査で粘膜がザラザラとした感触で一部ボリーブ状になっていたため、内視鏡検査を実施しました。

以下の画像は、内視鏡を直腸に挿入したときの粘膜の様子です。

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直腸粘膜はびらんを起こし、一部腫瘤になっていました。そこで異常箇所の直腸粘膜を内視鏡生検鉗子にて採材し、病理検査を行いました。その結果病理医から、直腸腺腫および炎症性ポリープの疑いであるが、典型的な炎症性ポリープの病理像とは異なるため注意が必要、良性悪性の判定はやや慎重を要する、とのコメントが得られました。

これらの病気は免疫抑制療法やアレルギー食により症状の緩和が期待できるため、ステロイドや免疫抑制剤による治療を開始しました。

しかし、治療当初はある程度症状の改善がありましたが、1ヶ月半ほどでまた粘血便やしぶり腹などの消化器症状が出るようになりました。そこで症状の緩和を目的として、粘膜プルスルーと呼ばれる直腸粘膜の切除術を行うこととしました。

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上の画像は手術時の様子です。肛門に縫合糸をかけて上下左右に牽引し、肛門付近の直腸粘膜に全周性にメスを入れ、直腸粘膜だけを外に引っ張り出します。黄色矢印部分は直腸粘膜がボコボコと病変を形成している箇所です。青矢印部分は病変が肉眼上なくなっており、キレイな粘膜面が確認されています。

この青矢印部分に剪刀を入れ病変を形成した直腸粘膜を切除し、キレイな粘膜面同士を縫い合わせました。

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上の画像は縫合後の粘膜の様子です。切除した直腸粘膜は改めて病理検査に提出しました。すると、直腸腺癌との確定診断が下りました。

症例は術後、しぶり腹や血便といった症状がかなり改善され、QOL(生活の質)が向上しました。直腸腺癌は、切除した粘膜よりも更に深部まで浸潤していた可能性があるため、現在は直腸腺癌の再発を監視しながら内科管理を継続しています。