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膝蓋骨内方脱臼・前十字靭帯断裂

[2014年03月07日]

膝蓋骨内方脱臼・前十字靭帯断裂

症例は12歳齢の柴犬。2週間ほど前につまずいて以来、右後肢を痛がるようになったため近医を受診したところ、整形外科が診られる病院へ行くよう薦められ、当院を受診しました。

触診では右膝関節に痛みがあり、膝蓋骨内方脱臼と、膝関節の前方向への不安定性を検出しました。下の画像は初診時のレントゲン画像です。

レントゲン検査では、両側の膝蓋骨内方脱臼(矢印部分)や、関節液貯留などの関節炎所見が確認されました。以上より、膝関節内方脱臼からの前十字靭帯断裂の併発と診断し、手術を行うこととしました。症例はすでに高齢のため、麻酔時間短縮のため、今回は症状が強く出ている右後肢のみ、手術を行いました。

前十字靭帯断裂の手術手技は、スーチャーアンカーによる関節外法を選択しました。

↑ スーチャーアンカー。骨に打ち込むステンレス製のアンカーと、人工靭帯となるファイバーワイヤーが一体化したインプラント。これを切れてしまった前十字靭帯の代わりとなるよう装着します。

上の左画像中央で切れた前十字靭帯を攝子(ピンセット)で示し、右画像中央で損傷した半月板を鉗子でつまんで示しています。切れた前十字靭帯と損傷した半月板は痛みの原因となるため、切除します。

← 切除した半月板

定法通り膝蓋骨内方脱臼整復を行い、次にスーチャーアンカーを使って関節外法を行い人工靭帯を装着しました。

上の画像は術後のレントゲン検査の様子です。膝蓋骨の位置が正しい位置になり(矢印部分)、触診でも膝の前後方向への不安定性がなくなりました。術後しばらくは安静を保ち、徐々にリハビリを開始していきます。

近年、前十字靭帯断裂の手術方法には多くの手技が考案されており、人工靭帯を使用した関節外法、TPLO(脛骨高平部水平骨切り術)、TTA(脛骨粗面前進化術)などがあります。手術方法の選択は、症例の年齢・体重・活動性・併発疾患・費用などを考慮し、相談しながら決定します。