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内蔵型肥満細胞腫

[2014年11月04日]

内蔵型肥満細胞腫

症例は11歳齢の未避妊メスの猫。糖尿病の既往歴が有り、定期的に血糖値をチェックし経過を見ていたが、突然の元気食欲の喪失を主訴に来院されました。以下がその時のレントゲン検査とエコー検査所見です。

レントゲン検査の結果、肝臓周囲に腫瘤性病変があることが疑われ(レントゲン画像の矢印部分)、更にエコー検査にて肝臓と接するように脾臓が大きく腫れていることがわかりました(エコー画像の矢印部分)。

そのため、血液凝固能に異常がないことを検査で確認の上、脾臓の細胞検査を行いました。以下は脾臓より針吸引生検した検体を染色し、顕微鏡で観察した様子です。

検査の結果、細胞質に多数の顆粒を含んだ肥満細胞が多数認められ、内蔵型肥満細胞腫と診断しました。

内蔵型肥満細胞腫は高ヒスタミン血症から胃潰瘍などの消化器症状を引き起こし、嘔吐や元気消失などの臨床症状が現れます。猫の脾臓に肥満細胞腫が発生した場合、高い確率で肝臓などの他の臓器にも播種している可能性がありますが、脾臓を摘出する事により臨床症状の改善が見込めるため、手術にて脾臓摘出を行いました。

以下は開腹時の所見です。

画像は開腹し脾臓を腹腔外へ出した時の様子です。脾臓は重度に腫脹し、中央部分が一部破けていました。脾臓への多数の血管を止め、脾臓を摘出し、他の臓器に大きな異常がないことを目視にて確認し、閉腹しました。

症例は翌日からとても元気になり食欲旺盛になったため、数日で退院となりました。今後は糖尿病のコントロールを行いながら、再発の監視を行います。近年効果があると報告されている分子標的薬も一つの選択肢ですが、持病もあるため慎重に検討する必要があります。