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症例紹介

閲覧時の注意
こちらのページには病気の説明のほか、レントゲン写真やエコー画像、手術中の画像や患部の傷の画像なども掲載しております。 そういった画像が苦手な方は、閲覧に十分ご注意ください。
  • 腸腺癌・消化管吻合

    症例は10歳齢の日本猫、去勢オス。一週間前より元気・食欲が減退して行き、ここ3日間は全く食べず、吐いているとのことで来院しました。

    画像診断より、胃と小腸に液体貯留が認められ、更に小腸と思われる領域に腫瘤が認められました。これにより、腫瘤による消化管通過障害が強く疑われたため、麻酔下にて腹部の試験開腹を行ないました。

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    上の画像は開腹直後の所見です。開腹してすぐに拡張した小腸が確認できました。さらに腸を精査すると、通過障害の原因となっていた小腸の腫瘤が確認されました。

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    上の画像の、指で指し示している箇所が腫瘤です。腫瘤より吻側(口に近い側)は腸管が重度に拡張しています。

    そこで、腫瘤を十分な切除マージンをとって切除し、消化管吻合を行ないました。

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    上の画像は、消化管吻合を行なった後の腸管の様子です。拡張してしまった腸と通常の大きさの腸では、直径が大きく異なり、そのような腸同士を吻合するのは、ある程度の技術が必要となります。消化管吻合後は他の臓器に異常がないことを目視・触診にて確認し、無菌生理食塩水にて腹腔内洗浄を行なった後、常法通り閉腹しました。

    腫瘤は病理検査に提出し、後日、腺癌と診断されました。

    腸腺癌は術後の死亡率が多いとされる腫瘍で、ある研究では術後の腹膜炎や転移、その他の合併症で50%近くが死亡したと報告されており、注意が必要です。

    本症例は病院スタッフと飼い主様の献身的な看護により、嘔吐が止まり元気・食欲も回復しました。一年近くたった現在も元気に生活しています。

  • 脱腸・結腸固定

    症例は2歳齢のオスの日本猫。外から帰ったら、お尻から赤いものが出ていたとのことで来院しました。以下は初診時の肛門周囲の様子です。

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    患部をよく観察すると、直腸が反転して肛門から脱出している、脱腸の状態だとわかりました。患部が乾かないよう保湿し、まず用手により肛門内へ整復するよう試みました。しかし、脱腸した部分はかなり腫脹していたため、整復は不可能な状態でした。

    そこで、手術による直腸の整復と結腸固定を行なうこととしました。

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    上の画像は、開腹下で結腸を引っぱり、脱出していた直腸を肛門内に収めた後、再脱出を防ぐため結腸と腹壁を縫い留めた様子です。

    下の画像は、直腸が肛門内に整復された後の肛門周囲の様子です。(画像左が足側、右がしっぽ側)

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    脱腸は放置すると粘膜が乾いてしまい、壊死に至ります。脱腸になってしまった場合は、腸が重大な損傷を受ける前に、早期に処置をすることが重要です。

  • 橈尺骨遠位端骨折

    症例は推定2歳齢のメスのトイプードル。抱っこしていた所、突然飛び降りてしまい、キャンと鳴いて左前肢を着かなくなってしまったとのことで来院しました。以下は初診時のX線検査所見です。

    X線所見より、橈骨・尺骨の骨折が確認されました。(上画像矢印)

    そのため、外科的にプレート固定による整復を行なうこととしました。以下の画像が手術時の様子です。

    画像左が骨折部の様子です。黒矢印は橈骨の近位(体に近い側)の骨折端、白矢印が遠位(足先側)の骨折端を示しています。

    画像右はプレート固定を行ない、骨折整復した後の様子です。橈尺骨は、骨への血流が元々悪いことから、骨折すると癒合不全を起こしやすいことが知られています。そのため、本症例は海面骨移植を行ないました。

    上の画像は海面骨移植を行なうため、上腕骨より海面骨を採取している様子です。採取された海面骨を骨折部へ埋め込むことにより、骨癒合を促進します。

    術後X線所見です。術後は安静を保ち、徐々に運動量を増やしていきます。本症例は骨癒合が順調に進みましたが、プレート下の骨にやや骨粗鬆が認められたため、段階的にインプラントの抜去を行ないました。

    (インプラント:生体内に埋め込まれたプレートなどの人工素材のこと)

    上画像は術後3ヵ月でスクリューを3本抜去した様子です。再骨折を防ぐため、一度に全てのインプラントを抜かず、段階的に抜いて行きます。

    術後5ヵ月で骨粗鬆も改善したため、インプラントを全て抜去し完治しました。

    本症例は橈骨の骨幅がわずか4.5mmしかないため、設置するプレート、スクリューは極小のものになり、やり直しがきかず難易度はかなり高くなります。

  • 異物誤食・胃切開

    症例は1歳齢の長毛種猫、避妊メス。糸がついた縫い針で遊んでいるのを発見し、すぐに取り上げようとしたが飲み込んでしまったようだとのことで来院しました。以下は初診時のX線検査所見です。

    X線検査では、胃の領域に縫い針が確認されました。縫い針の長さは5cmあり、糸も着いていることから無理に吐かせるのは危険と判断し、摘出手術を行なう事としました。

    左上の画像は、胃を切開し、異物である縫い針と糸を摘出している様子です。胃の中には毛玉が溜まっており、毛玉ごと摘出しています。

    右上の画像は、異物摘出後に胃を縫合したようすです。

    上の画像は、摘出した糸付き縫い針と毛玉です。異物摘出後、症例は徐々に元気を取り戻しました。

    針を誤食した場合、放置すると胃から突き出て他の臓器を傷つける可能性があります。また糸が着いている場合、糸がピンと張ってしまうことで消化管を切ってしまい、重大な腹膜炎を起こすことがあります。

    そのため、摘出は速やかに行なうことが重要です。

  • 外耳道切開

    症例は10歳齢の柴犬のオス。右耳の外耳炎を慢性的に繰り返しており、耳道洗浄・外用薬・内服薬などの内科治療を実施しました。しかし、症例は既に耳道狭窄を起こしており治療反応が悪く、耳の痒み・痛みが相当なストレスとなっていました。

    そこで飼い主様と相談の結果、手術を実施することとしました。犬の耳道は、まず縦穴(垂直耳道)があり、次に横穴(水平耳道)へと繋がり、鼓膜へと続きます。

    本症例は、ほとんど塞がってしまった垂直耳道の外側を切り開くことで外耳炎の緩和する、外耳道切開術を行なうこととしました。

    上の画像は術前の右耳の外観です。左が毛刈り前、右が毛刈り・消毒を行ない手術の準備が整った後です。慢性外耳炎のため、耳道外側の皮膚が変色しています。

    上の画像は皮膚を切開し、垂直耳道が見えてきたところです(矢印部分)。耳道周囲には顔面神経が走っているため、重要な神経を損傷しないよう慎重に垂直耳道を露出させます。

    垂直耳道の外壁を切り開き、切開した皮膚に縫い付けたところです。垂直耳道の内壁が露出しています。

    術後は毎日生理食塩水で洗浄を行ない、培養検査結果に合わせた抗生剤の投与を行ないます。

    術後2週間、抜糸後の耳の様子です。垂直耳道の外壁が無くなり、通気性が良くなっています。耳道洗浄も目視で確認しながらできるようになり、管理が容易になりました。右耳の痒み・痛みは改善し、現在は定期的な耳洗浄を行なっています。

    外耳道切開は重要な神経付近を操作します。また、耳道の慢性的な感染から術後に傷が開いてしまうリスクがあります。そのため、手術中の慎重な操作はもちろんのこと、術後管理にも十分気を配る必要があります。

  • 膝蓋骨内方脱臼

    症例は3歳齢のメスのパピヨン。床で足を滑らせて以来、右後肢を気にしており間欠的に跛行しているとのことで、かかりつけ医を受診しました。かかりつけ医では右後肢の膝蓋骨脱臼を指摘され、当院へはセカンドオピニオンを求めて来院されました。

    当院においても触診にて右膝蓋骨内方脱臼が確認され、X線検査を行いました。

    膝関節が内方脱臼しているのが確認できます(白矢印部分)。触診・X線検査にて他の骨関節疾患がないことを確認し、右膝蓋骨内方脱臼による跛行と診断しました。

    飼い主様には外科療法・内科療法の利点・欠点をご説明し、相談の結果、手術を行うことになりました。以下は術中所見です。

    ↓浅い滑車溝・軟骨のびらん  ↓滑車溝を深く造溝

    左画像は、膝蓋骨(膝のお皿)を内側へ引っ張っていた筋肉(縫工筋前部・内側広筋)を切断し、膝蓋骨が乗る滑車溝を露出させています。溝は浅く、内側の山(白矢印)が膝蓋骨との摩擦でびらんを起こしています。

    右画像はサジタルソーと呼ばれる医療用機器を使って溝を深くした後の画像です。

    上の画像は、膝蓋骨を滑車溝に乗せ、内側へ曲がってしまっていた脛骨(すねの骨)に切れ込みを入れ外側に矯正し金属で固定(青矢印)、外側の緩んだ関節包を切り取って縫縮した(白矢印)後の画像です。

    これらの手技により、膝蓋骨は滑車溝の上だけを滑るようになり、脱臼を防止します。

    上の画像は術後のX線検査所見です。白矢印で示したように、膝蓋骨が正常な位置に矯正されています。術後は2〜3ヵ月かけて徐々に運動量を増やして行き、通常の生活に戻ります。

    この症例は術後すぐに跛行は消失し、徐々に運動量を増やして2ヶ月後には通常の生活に戻りました。

  • 乳腺腫瘍

    症例は16歳のトイ・プードル、未避妊メス。以前より存在していた乳腺腫瘍が増大し、一部が破けて体調が悪くなったとのことで来院しました。

    乳腺に多発していた腫瘍は一部が自潰し、出血・化膿していました。そのため、症例は熱が上がり一般状態の低下が認められました。

    症例は16歳と高齢でしたが、このままでは今後更なるQOLの悪化が予想されたため、麻酔・手術に対するリスクを飼い主様にご理解頂いた上で、手術を行うこととしました。(QOL:quality of lifeの略で、生命・生活の質のこと)

    上の画像は術前の乳腺の様子です。画像左側が頭側、右側が尾側です。多数の腫瘍がボコボコと多発しており、一部が自潰していました(白矢印)。また、頭側の腫瘍は薄皮一枚で破裂寸前の状態となっていました(黒矢印)。

    そこで既に自潰している腫瘍と、今後自潰する可能性の高い腫瘍の切除による局所制御を目的として、左第二乳腺から第五乳腺、および右第三乳腺から第四乳腺までの範囲を一括して切除しました。

    上の画像は、乳腺腫瘍を切除し、縫合した後の様子です。術後、症例は一般状態が改善し、元気にご飯を食べ、散歩も可能となりました。

    画像は術後2週間で抜糸をした後の術創の様子です。以降は局所再発や一般状態の経過観察を行って行きます。

    乳腺腫瘍は中高齢の未避妊メスに発生することが多い腫瘍です。予防には若いうちに避妊手術を行うことが効果的とされています。

    手術を行う際は、根治目的で拡大切除を行うのか、本症例のように現在のQOLの向上のために必要な部分のみの切除を行うのか、目的を明確にし、飼い主様と十分相談の上で実施する必要があります。

  • 上腕骨骨折

    症例は5ヶ月齢の未避妊メスの猫。キャットタワーから落下し、右前肢を着かなくなってしまったとのことで近医を受診しました。X線検査が行われ、右上腕骨骨折が確認されました。そのため、当院へ手術を行うために紹介来院されました。

    以下は初診時のX線検査所見です。

    上腕骨遠位部(二の腕の肘に近い部分)の骨折が確認されました。そこで飼い主様と相談の結果、手術による整復を行うこととしました。

    以下は術中所見です。

    肘の辺りから大きく突き出しているのが上腕骨の骨折端です。本症例は体重が2kgしかなく、骨もかなり細いため、骨や軟部組織の取り扱いは慎重を要します。

    骨折整復後の術中所見です。K−ワイヤーと呼ばれる医療用ステンレスを使用し、骨折を整復しました。

    以下は術後X線所見です。

    術後は安静にしますが、骨形成を促すため患肢は少しずつ使用させる必要が有ります。成長期の動物の骨折の場合、金属が骨の成長を阻害しないよう、骨癒合が完了した後は抜去します。本症例も術後1ヶ月で金属を抜去しました。

  • 内蔵型肥満細胞腫

    症例は11歳齢の未避妊メスの猫。糖尿病の既往歴が有り、定期的に血糖値をチェックし経過を見ていたが、突然の元気食欲の喪失を主訴に来院されました。以下がその時のレントゲン検査とエコー検査所見です。

    レントゲン検査の結果、肝臓周囲に腫瘤性病変があることが疑われ(レントゲン画像の矢印部分)、更にエコー検査にて肝臓と接するように脾臓が大きく腫れていることがわかりました(エコー画像の矢印部分)。

    そのため、血液凝固能に異常がないことを検査で確認の上、脾臓の細胞検査を行いました。以下は脾臓より針吸引生検した検体を染色し、顕微鏡で観察した様子です。

    検査の結果、細胞質に多数の顆粒を含んだ肥満細胞が多数認められ、内蔵型肥満細胞腫と診断しました。

    内蔵型肥満細胞腫は高ヒスタミン血症から胃潰瘍などの消化器症状を引き起こし、嘔吐や元気消失などの臨床症状が現れます。猫の脾臓に肥満細胞腫が発生した場合、高い確率で肝臓などの他の臓器にも播種している可能性がありますが、脾臓を摘出する事により臨床症状の改善が見込めるため、手術にて脾臓摘出を行いました。

    以下は開腹時の所見です。

    画像は開腹し脾臓を腹腔外へ出した時の様子です。脾臓は重度に腫脹し、中央部分が一部破けていました。脾臓への多数の血管を止め、脾臓を摘出し、他の臓器に大きな異常がないことを目視にて確認し、閉腹しました。

    症例は翌日からとても元気になり食欲旺盛になったため、数日で退院となりました。今後は糖尿病のコントロールを行いながら、再発の監視を行います。近年効果があると報告されている分子標的薬も一つの選択肢ですが、持病もあるため慎重に検討する必要があります。

  • 子宮蓄膿症

    症例は7歳齢の未避妊メスのチワワ。ここ数日食欲が無く、元気がなくなったとのことで来院しました。身体検査では、陰部より少量の排膿が認められ、各種検査を行いました。

    上の画像はレントゲン検査所見です。子宮の位置に軟部組織陰影が認められました(矢印部分)。

    上の画像は超音波検査所見です。レントゲン検査の矢印のあたりに超音波を当てています。正常な子宮は超音波検査では見えないことが多いですが、本症例では子宮と思われる陰影がはっきり確認されました。また、血液検査では白血球の増加が認められました。

    以上より子宮蓄膿症を強く疑い、開腹手術を行いました。

    術中所見です。画像の右が頭側、左が尾側です。膿を溜め込んだ左右の子宮角を確認しました。本症例は子宮から腹腔内に膿が漏れ出て、重度の腹膜炎を併発しており、非常に危険な状態でした。

    腹水の培養検査を行い、子宮・卵巣摘出術を実施しました。

    お腹を裏打している腹膜は重度に充血し、腹水が認めれます(左画像)。また、腸間膜にも炎症は波及し、出血が認められます(右画像、矢印)。そのため子宮・卵巣を摘出後に、温めた生理食塩水を用いて腹腔内洗浄を十分に行いました。

    術後にも腹腔内の滲出液が排液されるよう、閉腹時にドレーンを設置しました(下画像の矢印)。

    このドレーンは腹腔内まで繋がっており、毛細管現象によりお腹の中の汚れた液体が排出されます。本症例は5日程で排液が認められなくなったため、その時点でドレーンを抜去しました。

    術後は静脈点滴と、培養検査結果より選択された抗生剤の投与を行い、数日で元気食欲は改善し退院となりました。

    子宮蓄膿症は中高齢の未避妊メスに発生する病気で、発見が遅れると腎不全や腹膜炎を併発し命に関わります。若いうちに避妊手術を行うことで、この病気は予防することができます。