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パワーツールの選択

[2018年07月15日]

こんにちは。獣医師の平松です。前回に引き続き、整形外科パワーツールについての話題です。前回のブログをまだお読みになっていない方は、前回ブログからお読み下さい。

新しいパワーツールの必要性を感じ、導入を決意しましたが、様々なメーカーがドリルを作っており、どこの会社のドリルを選ぶのかは重要です。何せ、医療用ドリルは良いものだと、数百万円もかかります。失敗は許されません。

↑ こちらはstrykerという会社が制作している「CORE」という機種です。こちらはコードで本体と連結するため、バッテリー切れの心配がなく、いつでもパワフルなドリリングが可能です。精度も高く、ブレがすくないです。以前、デモで使用感を試しましたが、バッテリーがない分、ドリルが軽くて小さく、小型犬の骨へのドリリングも狙いが定めやすいように思いました。

↑ こちらはnakanishiが作っている「Primado 2」です。ナカニシといえば、人の歯科の領域で、歯を削るパワーツールを作っていることでも有名です。整形外科の領域でも、ドリルやラウンドバーを作っています。こちらもドリルと本体をコードで接続し、使用します。整形外科にとても精通している友人獣医師が、このPrimado 2を使っており、使用感をきいた所、ものすごく使い易いとのことでした。

上記の2機種は、老舗メーカーが作っており、ドリルの信頼性は十分です。しかし問題点としては、TPLOと呼ばれる前十字靭帯断裂の手術時に、脛骨を半円状に切るためのTPLOブレード(半円状のノコギリ)を付けるためのアタッチメントがないことです。(TPLOについては、先月のブログに詳しく書いてありますので、宜しければ読んでみて下さい!)

そのため、上記の2機種の内のどちらかを選択した場合、下の画像のようなTPLO用のパワーツールを、別で用意する必要があります。

↑ こちらはVOI社製のTPLO SAWというパワーツールで、画面右側にTPLOブレード(半円状のノコギリ)を装着し、左の方には動力となるコードを取り付けます。このパワーツールはTPLO(またはCBLO、詳しくはまた後日書きます)のためだけのツールで、世界的なシェアは高いのですが、ドリルとは別で用意しなければならず、しかも日本では売られていません。

これらの問題点を全てクリアしているのが、DePuy Synthèseが作っている「ColibriⅡ」です。こちら↓↓↓

ColibriⅡはバッテリー駆動のため、コードや本体がないため、コードを気にすることなく様々な角度でのドリリングが可能です。ドリルビットのアタッチメント、K-ワイヤー(ピン)のアタッチメント、TPLOソーのアタッチメント、サジタルソーのアタッチメントなどが揃い、多彩な機能を有しています。

↑ TPLOソーのアタッチメントと、TPLOブレードを装着したColibriⅡ。

多くの大学病院でもこのColibriⅡが導入され、使用感はかなり良いようです。しかし、このColibriにも欠点があります。ズバリ高額な所です。これは本当に高いです。どこまでアタッチメントを揃えるかにもよりますが、他のパワーツールと比較しても相当高額です。また、ドリル本体が多少大きく、重さも他のパワーツールよりは重いです。

しかし日本国内で手に入り、TPLOソーのアタッチメントが着けられるという利点が大きく、以前よりこのColibriⅡをずっと狙っていました。

ところが、最近TPLOセミナーを受けた際に、更に良さそうなパワーツールが紹介されていました。それがこの、英国deSoutter MEDICALの「Vdrive」です。こちら↓↓↓

このVdriveは、ColorⅡと同じようにバッテリー駆動で動き、ドリルビットやK-ワイヤーのほか、TPLOソーのアタッチメントも装着可能です。ColibriⅡと比較してややコンパクトで、最大の利点はTPLOブレードのサイズが豊富なことです。ColibriⅡのTPLOブレードは12mm〜30mmまでの7種類ですが、このVdriveは8mm〜33mmまで10種類もあり、超小型犬から超大型犬までTPLOを実施することが可能です。

こちらのVdriveも高額ではありますが、ColibriⅡほどではありません。ヨーロッパの小動物整形外科専門医のブルーノ・ペイロン先生も、最もトルクがあり使い易いと太鼓判を押しており、是非とも手に入れたいと思いました。

最大の難関は、日本で売っていないという点でありましたが、最近、販売窓口となっているアメリカのVOI社に日本オフィスがオープンし、そこに直接問い合わせた所、見積もりをだしてくれ、個人輸入できることが分かりました。

ここまでくれば、もうVdriveに決定です。早速VOI社に発注し、先日、ついにVdriveが届きました。次回のブログでは、届いたVdriveについて書きたいと思います。随分マニアックな内容で恐縮ですが、宜しければあともう一回だけお付き合い下さいませ!

獣医師 平松